法律入門の第一歩:『六法で身につける 荘司雅彦の法律力養成講座』
- 作者: 荘司雅彦
- 出版社/メーカー: 日本実業出版社
- 発売日: 2009/01/24
- メディア: 単行本
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本書は、弁護士・荘司雅彦氏による、六法の入門書。そして、「法学」ではなく、「法律」の入門書。
法学とは、法律に対し考察を加える学問である。大学で多くの人が学ぶのはこれであり、実際、法律という道具に対する批判的な視点の獲得は実務家にとっても重要なものである。
だが、手っ取り早く現存する法律の内容を知りたいと思っている人にとって、「そもそも法とは…」という語りを聞くのは時間の無駄だ。
その点、六法の内容を限界まで削ぎ落として要約した本書は、法律の内容を知りたいという人が1冊目に読む本として適当な本といえる。
同様の書籍としては、各法ごとの入門書も各種出版されているが、本書は六法(憲法、民法、商法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法)をわずか200ページにまとめてしまっている。
本書の構成はシンプルだ。まず、憲法第13条の条文から、憲法、ひいてはすべての法律の究極目標は、「個人の権利の尊重」にあることを明らかにする。そこから、各法律ごとのアウトラインを記していくことになるのだが、各法の骨格の取り出し方も巧妙で、ツボを押さえている。
六法を学習し終わった人が手にする必要性は感じないが、未習範囲がある場合、一度は本書で学んでみると、習得が早いのではないか。
ひとつだけ欠点を挙げるなら、発展学習用の書籍紹介の項。
芦部憲法 第四版、内田民法I 第4版: 総則・物権総論等、学者の基本書がずらりと並ぶが、これらの書籍はしっかり読みこなせば司法試験でも通用するレベルのもので、本書を読み終わった時点で手にするにはいささか敷居が高い。
大学生なら授業と並行して読み進めることになるが、独学で社会人が読みこなすのは骨が折れるだろう。最短で結果が出る超勉強法 (講談社BIZ)で荘司氏が紹介している、「薄い入門書を短期間で複数冊or複数回読む」という作業を、芦部憲法や内田民法で行えというのだろうか。無茶だ。
入門書のラインナップは移り変わりが激しいこと、著者のカバー範囲でないことを考えると仕方ないのかもしれないが、この点だけは残念だ。