アニメの海外展開について

 弾さんが何をもって「irresponsible」としているかは判然としないけれども。


 世界中が日本の返事を待っている - 書評 - アニメ文化外交


 キャプテン翼のアニメ版は、原作漫画の大ヒットの副産物であって、「キャプテン翼」という総合的コンテンツの一部門に過ぎない。さらにうがった言い方をするなら、そもそも昔のアニメは、30分かけたCMか、枠を埋めるための低予算番組のいずれかに過ぎなかった。キャプつばは前者の「30分CM」だ。

 アニメには視聴者の多さという武器があるけれど、単品ではコストパフォーマンスが悪い。爆発的に売れた『涼宮ハルヒの憂鬱』のDVDでようやく、全9巻で50万枚。一方、原作小説は既刊9巻で560万部。価格が一桁違うとはいえ、クリエイターの数を考えれば、どちらが「効率的」かは一目瞭然。

 本格的にビジネスとして展開するなら、アニメ・CD・漫画・小説等のメディアミックスで、リスクの分散と収益の最大化を図る必要がある。けれど、そこまでの市場は海外にはまだ存在しない。

 日本国内でだって、クリエイターの熱意*1と、ファンのお布施*2によって支えられている、ニッチなコンテンツなのだ。カルチャーとしてはともかく、ビジネスとして海外でも展開するのは難しい。AnimeNation等、アメリカで版権を買い取ってDVDを販売している会社も、苦戦を強いられている。

 海外でのネット配信の試みも見られるけれども、これは「30分CM」の類。すでにコミックスを展開しているジャンプ作品だからこそできること。アニメをメインで売っている会社でも、GDHの寄付制などの試みが見られるが、上手く行っているとは言い難い。


 現実的には、ファンサブもグレーゾーンとして黙認しつつ、ビジネスの基盤となるファンベースが育つのを見守るしかないのではないか。日本でだって、「ヤマト」から35年、やっとここまで来たのだ。オタクが購買力を持つには、時間がかかるのである。

*1:20代アニメーター、平均年収は110万円等、アニメ製作現場の薄給はよく知られている。

*2:1話30分に数千円(昔のOVAなら1万数千円)払ってくれるファンが数千人いる、というのは結構すごいことだ。